2009年-中国の旅 (上海-世紀公園) [帰国日]
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いよいよ、今回の旅のメインイベントである皆既日食だ。曇天であるが、幸い雨は降っていない。まずは荷物を預けるべく、タクシーを用いて上海浦東空港に向かった。到着8時過ぎ。がんばったと思うよ! 早起き。
さて、空港を早く訪れた理由としては荷物を預けておきたかったから。日食鑑賞後は混み合うことが予想される。何よりもバックパックを持ったままの移動は相当苦になるだろうと予期できた。しかし、JALのフロントに行くと荷物を預けることはできなかった。窓口嬢曰く、「搭乗の3時間前から荷物預かり可能なんですよ」とのこと。中国の国内線ではこんなこと無かったのに。文句を言ってもしょうがないので、荷物預かりサービスを利用することにした。ふたりで30元くらいだっけな、思ったよりも高くなくてうれしい。
上海リニア線、リニアモーターカーに乗って龍陽路駅に向かう。直通なので、一駅なんだけどね。見事に時速300キロメートル出ていたよ。ちなみに、最高時速は431キロメートルらしい。しかし時間帯による。僕らの乗った時間帯は時速300キロメートルの時間帯だった。うーん、残念。復路に期待。
龍陽路駅に到着したのが9時10分、40分後には日食スタートである。コンビニでレッドブルやスナック菓子を買い込み、世紀公園方面へ歩いていく。ふと、空を見上げると太陽が欠けている! 時計を見ると9時51分を過ぎていた。皆既日食がスタートした。急ぎ足で世紀公園に向かい到着するも、なぜか「今は入れないアルよー」と告げられる。まぁ、入れなくてもよし。公園の門の付近は十分に広く、日食を干渉するのに全く支障がない。徐々に欠けていく太陽、しかし三分の一ほど隠れた頃だろうか、分厚い雲が太陽を覆い隠してしまった。容易にその雲が晴れないことは想像がつく。さらに、ぽつりと蘇州で感じたそれとは明らかに質の違う雨粒を肌が感知した。雨がくる……。
観測を取りやめ方向転換、元来た道を戻り、食材を購入したコンビニを目指した。雨に打たれることなくコンビニに到着、その2分後に付近は豪雨地帯と化した。先ほどレジを売ってくれた愛想の悪いお姉さんも様子を伺いに屋外に出てくる。雨脚が強まる中、ついにやってきた10時38分。闇がコンビニの周辺を溶かしていた。信号の点灯が眩しい。皆既日食を全く知らなかった人々はこの瞬間をどのように捉えるのだろうか。突如訪れた夜は6分間であった。覆い尽くしていた暗闇が信じられないスピードで晴れていく様は、見た者にしか伝わらない異様な光景。そして、見た者だけが得られる感動。昼が夜になる瞬間を見ることができるのは26年後だそうだ。次は晴れた日にしっかりとその現場に立っていたい。
生まれて初めて体験した皆既日食に少し感動を覚え、次回の皆既日食に期待を膨らませ、再び浦東空港に向かった。残念なことに帰りのリニアモーターカーも時速300キロメートル規制に引っかかっていた。なんという運の悪さ。最終日はすべて失敗、という結果になった。とはいえ、皆既日食については当初の天気予報から全く見ることができないと思っていた。雨予報100%だったから……。だから、一部日食を見ることができただけでも得した気分。また、6分間も続いた夜の世界を堪能できたのも良かった。こんなにも闇に包まれるとは思ってもいなかった。
成田空港に着いたのが18時過ぎ。日本の清潔で近代的なにおいが鼻をくすぐる。荷物を受け取り、総武快速線に乗り込んだ。日本に戻ってきて何度も感じることだが、昨日まで別世界にいたということ、翌日から今まで行ってきた日常の生活が繰り返されるということが全く信じられない。ただ、その感覚の違和を感じることも海外旅行の一部なのかもしれない。撮った写真を整理しつつ、そんな考えが頭をよぎった。